レン高原#1
えーでは、ブーンってなってて、あなた方は今非常な振動を感じています。
ガタンガタンッ!ガタンガタンッ!と激しく揺れる車内で気が付きました。
二人の人間と、一匹の大きな黒い犬が乗り合わせています。
メッセ、左右田、田中の3人はパジェロで不毛の荒野を爆走しています。
レン高原スタートです。
〜レン高原〜
運転しているのはメッセ。助手席には真っ青通り越して青灰色の顔をした左右田。
後部座席で伏せの態勢の、犬の姿の田中。通称タナトス。
左右田は窓を全開に開けて首を外に出すとそのまま嘔吐しました。
ゔおえぇぇって吐いてます。
胃の中にはあまり物は入ってないようです。
後方からは黒い巨大な蛇のようなものが砂煙を立て追ってきています。
左右田がメッセの指す方を見ます。ピラミッドにそっくりな、見覚えのあるシルエットの街があります。
部屋片付けてないけどまぁいいやとメッセが言います。
3人ともレン高原にいきなりほっぽり出されるシチュエーションは、名作シナリオ『正気の街』の導入と同じです。
違う点は、彼らにはもう帰る場所がないということです。
レン高原は口にするのも恐ろしい汚れた神官やら神格やら古のものやら…とにかく化け物の巣窟です。足を踏み入れた物は帰ってこれないでしょう。
跳ねるパジェロの車内で、メッセは呟きました。かつての家だったピラミッドが、砂煙で見えなくなるのを感じながら。
左右田の顔色は死体よりも悪く見えました。
田中、タナトスはじっと動きませんが酔ってる様子はないようです。窓の外を見ないようにしています。
窓の外には蛇の化け物の他に、人間よりも大きな気色悪い両生類が数頭、ウロエロしています。ムーンビーストです。
さあどうする?
ハンドルを持つメッセに、左右田が苦し紛れにオーダーします。
とりあえずは化け物から逃げるのが先決、アクセルベタ踏みでパジェロは引き離します。
向かう先には山しかありません。
暗く陰気なレン高原の、西にある岩の山脈へと彼らはまっすぐ向かっていました。